映画「ノー・アザー・ランド 故郷は他にない」を観る日。第97代アカデミー賞 長編ドキュメンタリー賞 受賞作品。
長〜い歴史の中で、故郷の土地を追われ、戻ってきたと思ったら、また追われ…。一方で、我らが占領したから追い出す。射撃区域だと宣言すれば大義名分が成り立つのか…イスラエル人入植者のために確保された土地だけどね、と。
問答無用で家を破壊し、武器を持たない民間人に発砲。力づくで、ひとつ所に集めるために追い出す、追いやる、非人道的に。
電線を切られ、井戸にセメントみたいなものが流し込まれ、小学校も壊され、銃で撃たれ…
彼らの住んでいるちょっと先には煌々と明かりが灯され、町が広がっている。

共に暮らすってなんだろう。相容れないと思っている2つの塊は、相容れることをそもそも考えようとしていないのか。かたや民法、かたや軍法…。色分けされた車…。入植者は武装して民兵グループとなり、武器を持たない人に銃を向ける。
民間人を1人でも巻き込んだら、ミスだろうと勘違いだろうと、それこそ問答無用で裁く…。なのに。
戦って戦って勝った人たちの世界らしいから。勝たなきゃいけないのか…
映画館に一緒にいたのは30人くらい。外に出ると、春爛漫…笑顔いっぱいでランチをしている人、ショッピングを楽しむ人…30人どころの数じゃない。これが、私の目の前の現実。
ジャーナリストも、「伝えることはできるし、伝えるが、その先はどうしたらいいのか」と打つ手なしの状況に黙り込む。
ヨルダン川西岸で起きていることを背景に、ガザでは民間の人もジャーナリストも命が奪われている。イスラエル軍の攻撃が続くガザでは、戦闘が始まって1年半ほどの間に170人以上のジャーナリストが殺害された…
あなたが私の立場なら。私があなたの立場なら。いや、やっぱり意味がない。そうすべきで、そうであることが正しいことだから。そう思ってしまっているから。
10日でカタがつくものではない。ある日、ようやく、ともに暮らそうよという人たちが半数以上になって、8割を超えて…きっとそんな時に平和と言われるものが訪れるのか。
天災じゃなくて、人災で、生きたい人が生きられない世界。何やっているんだか…
そしてやっぱり私の目の前には、悩みはあれども、春の暖かさに包まれた人たちが溢れている…

パンフレットからは、映画で語られていないことも見えてくる。
イスラエル軍による破壊行為と占領が今まさに進行している、ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区<マサーフェル・ヤッタ>。
本作は、この現状をカメラに収め世界に発信することで占領を終結させ故郷の村を守ろうとするパレスチナ人青年バーセル・アドラーと、彼に協力しようとその地にやってきたイスラエル人青年ユヴァル・アブラハームの2人による決死の活動を、2023年10月までの4年間に渡り記録したドキュメンタリーだ。 公式サイトより引用