ブリジット・バルドーが観たかったのか、フランス映画に浸りたかったのか、1963年の映画のよみがえりを目に焼き付けたかったのか…。2023年カンヌ国際映画祭クラシック部門で上映された、というのも足をとめた理由かも。
選んだ作品は、ジャン=リュック・ゴダールの最高傑作の1つ『軽蔑』。60周年を記念して、修復して復活させた4Kレストア版。220時間かけて、色彩や照明のずれなどを補正したもの。1963年に存在した海の色、空の色、鮮やかな衣装…。
まず最初に、なんで、なんで?っていうハテナが我が脳内にドドッと押し寄せてきて、私は何かを見逃したのかと焦る。いや、昔のフランス映画はこういう感じだったと聞いたことがあるから、皆同じ気持ちだろうと。焦りながらも平常心を保つ努力。
ようやく、ようやく、彼女の言わんとするところが分かったような気になり、それをベースに、鮮やかによみがえった映像を追いかける。悲劇であることは予告を見て分かってはいるが、いったいどういう気持ちが残るのか、悲しみへの心づもりを新たにする。
なるほど、壮大な景色をバックに、日常の機微を描く映画…。贅沢だ。あの時代に、スクリーンでこの映画を観たならば、私は何か救われるところがあったのかもしれない。あの時代に生きていたならば…。何をしていたか、どんな生活を送っていたかは分からないけれど。
それにしても、技術の進歩には感嘆のためいきがもれる。220時間とサラッと伝えてはいるけれど、相当な集中力を要したことと想像する。あの時代のあの景色を見せてくださり、懐かしさとともに心の片隅に残り続けるこの感覚。美しい景色の中に身を置きたいと思う今日この頃。
監督:ジャン=リュック・ゴダール
出演:ブリジット・バルドー、ミシェル・ピッコリ、ジャック・パランス、ジョルジア・モール、フリッツ・ラング
原作:アルベルト・モラヴィア