遡ること20数年前、仕事で行かせていただいたイタリア・ナポリ近郊の古代都市ポンペイ。
「西暦79年のヴェスヴィオ火山の噴火によって、ポンペイの街も人も一瞬のうちに消えてしまいました。今、皆さんが立っているところは、溶岩や土砂、火山灰によって埋もれていたんですよ!」
そんな説明を受けながら、発掘された子供の骨やミイラ化した遺体を見て回った。
「ここが調理場で、ここが寝室で……」
と、ガイドさんが説明をしてくださった。
石が積み重ねられた壁と土や砂だらけの街。とても無機質で、外国の歴史的遺物がただただ広がっていた。
そんなポンペイの発掘は18世紀から進められ、現在もなお進行中。
そして今、東京国立博物館で特別展「ポンペイ」が開催されている。
壁画や彫像、床に施されたモザイク、工芸品をはじめ、食器、調理具、調度品やアクセサリー、そして農耕具に医療器具、お芝居の仮面や奴隷の足輪に至るまで。住んでいた人々の暮らしが目の前に広がっていて、急に生々しく感じられた。活気があったんだ。そこには色があったんだ!
身分の差はあったけれど、奴隷から事業を成功させて裕福な生活をすることも夢ではない時代。ある意味、今よりも自由度が高そう……。
2000年近く前といえば、日本は縄文〜弥生時代! 比べてみると、ポンペイの暮らしはとてつもなく古い感じがしない。彫像やモザイク、工芸品の技術は現代でも使われていて、当時すでに完成しているように見えるし。
リアルな生を感じれば感じるほど、自然災害の脅威に恐れおののく。
寒くたって、風が吹いていたって、私たちの上には青空が広がっている。今の暮らしに感謝しよう。